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Study & Learning : ジョン・ケージ『4分33秒』は何をしたのか?

今回は「前衛音楽」を取り上げます。

前衛音楽といえば、現代ではBjorkなんかを思い浮かべる人が多いでしょうか。そこまで音楽マニアではないという方でも、次の「音楽」を聴いたことがあるかもしれません。



この音楽作品はジョン・ケージという人物が創った『4分33秒』という楽曲です(動画の演奏者は別の方です)。ご覧の通り、演奏中は演奏をしないという一見かなり奇抜な作品です。テレビなどでも時折「演奏しない変な音楽」みたいな感じで取り上げられていることがあるので、なんとなく『4分33秒』の存在やジョン・ケージの名を耳にしたことがある人は多いでしょう。

本作の意図は楽音、つまりピアノやバイオリンのような「楽器」から鳴る音以外も音楽になり得る、そういった音の存在に耳を澄ますというものですが、純粋にその意図を「納得!」とは思いづらいですよね。

実はこの『4分33秒』、そしてジョン・ケージという人物において注目すべきなのが、後の前衛音楽に与えた影響なんです。

前衛音楽は第二次世界大戦まで、そしてその後もしばらくかなり不協和音にこだわっていました。不協和音とは、あくまでもイメージとしての説明ですが、ピアノのドとレを同時に鳴らした時に「気持ち悪い」と感じるような音です。

気持ち悪いと感じる人もいれば感じない人もいるのですが、第二次世界大戦前後の前衛音楽といえば不協和音の使用の徹底化が目的かと思うくらい、異様な響きを放っています。

あらかじめ鳴らす音の順番を決める十二音技法、それを発展させたセリーという考えが代表的です。

このような前衛音楽は、ここまでの解説を見てもなんとなくイメージできると思いますが、「わかる人だけわかればいい」という、ある種のエリート志向的な音楽でした。音楽について詳しく、教養や好奇心の強い人だけがその真価をつかめるといった類のものが「前衛音楽」だったわけです。

ところが、1952年の『4分33秒』はそこに風穴を開けます。「楽器を弾かない音楽」、そしてそれによって「あらゆる音が音楽になる」という体験、こんな自由なことがあっていいのかというインパクトを『4分33秒』は前衛音楽家たちに与えます。つまり、『4分33秒』はそれまでの前衛音楽の「徹底した不協和音状態」をちょっと緩めてくれたということです。

それ以降、ノイズを自由に使った音楽や既成の方法に囚われない楽器演奏のスタイルなど、前衛音楽が不協和音へのこだわりから「不協和音『も』使う」という比較的自由な形に解放されていきます。

Bjorkやシガー・ロスといった前衛に分類されるミュージシャンたちは、前衛と言いつつも作品として楽しめる要素を内包しています。それらの作品は『4分33秒』が解き放った前衛音楽の多様性への道、部分的なポピュラー音楽化の積み重ねの結晶とも言えるでしょう。

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