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音楽讃美第9回:Shiroharu Luna『Wonderland and Twilight』

※このカテゴリー「音楽讃美」は、世間でいうところの音楽レビューになるのでしょうが、僕としては自分が聴く音楽は全部最高に自分が好きなものばかりなので、星がいくつなどという「評価」はしません。とにかく自分が触れている音楽作品を讃美しようというカテゴリーです。基本的にネタバレを含むので、ご注意ください。それでは、どうぞお付き合いください。


今回の音楽讃美では、Twitterで知ったShiroharu Lunaさんのインストアルバム『Wonderland and Twilight』を取り上げます。

実はあらゆるミュージシャンのインストアルバムの中で、僕が最もよく聴いているのがこの作品です。まるで短編小説を読んでいるかのような、だけど小説とは決して違う世界を感じます。

インストというものは、歌ものに比べると歌詞の有無からその解釈がリスナーに委ねられる部分がかなり大きいです。そこで重要になるのがアルバムや楽曲のタイトルですが、『Wonderland and Twilight』は楽曲はもちろん、タイトルを追いながら聴くことでいろんな想像を膨らますことができます。

「Scared」という楽曲が前半に収められていますが、曲自体は自然の音が入った心地よいサウンドです。でも、このアルバム、そしてこのタイトルによって「Scared」は「新しいもの」への恐れや期待感を感じさせる楽曲に変貌します。

アルバムのタイトルを見ると、『Wonderland and Twilight』はその世界に迷い込んだ孤独な雰囲気をまとっている印象がありますし、前半では実際に一人旅に出ているような気分になります。

ところが、「共犯者」や「グル」を意味する「Accomplice」という楽曲で、『Wonderland and Twilight』が決して孤独な世界ではないことが知らされます。また、各楽曲の豊かで洗練されたサウンドも他者の存在を意識させます。

そのうえで終盤の「24 Silent Clocks」を初めて聴いた時、僕は涙ぐみました。「24」は1日の時間を表しているとも捉えられますが、複数形の「Clocks」によって「人それぞれの時間」を指しているように感じられます。そして、それは「Silent」なんです。

時間という概念自体は見えず、聞こえない静かなものです。同時に、他者の中で流れる思いや時間も見えないものです。

「24 Silent Clocks」は単独で聴くと一人の中にある走馬灯のようなもの感じさせますが、アルバム単位で聴いた時、この楽曲にはたくさんの人の命の香りがします。

『Wonderland and Twilight』は悲しみや切なさ、死や没落をイメージさせる「Twilight」をタイトルに含みながらも、そこに「Wonderland」が確実に横たわっています。

僕がこのアルバムを聴いた時に感じるのは、「Wonderland」と「Twilight」のどちらかではなく、両方を行き来したり、それらが中和されてグラデーションになった「美しい世界」です。そして、アルバムに流れるたくさんの命の息吹を聴くと、もしかすると『Wonderland and Twilight』は僕たちが生きるこの世界なのかもしれません。

【リンク】
Bandcamp 『Wonderland and Twilight』
Twitter (@songrabbitter )

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