Nakadomari Lab.

ミュージシャンNakadomariの公式ウェブサイト

音楽讃美第3回:中島みゆき『夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋 』

※このカテゴリー「音楽讃美」は、世間でいうところの音楽レビューになるのでしょうが、僕としては自分が聴く音楽は全部最高に自分が好きなものばかりなので、星がいくつなどという「評価」はしません。とにかく自分が触れている音楽作品を讃美しようというカテゴリーです。基本的にネタバレを含むので、ご注意ください。それでは、どうぞお付き合いください。


今回は中島みゆきの夜会シリーズから、『夜会VOL.16 〜夜物語〜本家・今晩屋 』を取り上げます。以下、本作は『夜物語』と表記します。


中島みゆきの夜会の中でも恐らく最も好き嫌いが分かれるのが『夜物語』でしょう。夜会自体がそもそも苦手という人もいますが、夜会が好きな方でも本作は苦手という方は少なくないのでは。


その理由として、まず『安寿と厨子王』の話を知っていないといけないという点が挙げられます。今までの夜会も文学作品や説話を基に作られたものがいくつかありますが、『夜物語』に関してはブックレットに「安寿と厨子王のその後」と明示されていることから、前提知識が無いと全く意味が分からないでしょう。


また、古語の表現がたくさん出てくるのも本作を難解にしている要素の一つです。たとえば「ほうやれほ」なんかは僕はかなりの名曲だとは思いますが、「我が兄」という表現の「兄(せ)」は古語では兄弟ではなく夫のことを指します。ある程度古典を読みなれていないとうまく筋をたどれないのはだいぶ敷居が高いですね。


ただ、中島みゆきも恐らく今作の敷居の高さを分かっており、それを反映してか映像作品では台詞を全て印刷したブックレットの付録に加え、他の夜会ではなかった「台詞の字幕」がついています。


ブックレットにも書いてある通り、『安寿と厨子王』の話さえ知っていれば本作はとんでもなくシンプルな話で、『安寿と厨子王』の登場人物たちが現代に転生し、様々な形を経て『安寿と厨子王』の時代の自分を思い出すというわけです。


中島みゆきがブックレット冒頭で指摘している通り、『安寿と厨子王』はあまりにもあっさりと完結してしまう話です。それに納得がいかない中島みゆきは、離れ離れになった家族の後悔、寂しさ、苦悩などを炙り出すように表現し、「赦され河」を渡ることでようやく報われるという「続き」を作ったわけです。


和風のメロディーが元々多い中島みゆきですが、『夜物語』ではコンセプトを反映して日本の童謡や民謡、宗教音楽のようなテイストの楽曲がこれまでより多く使われています。僕は中島みゆきのこのタイプの楽曲がかなり好きなので、本作はかなりお気に入りです。


これから『夜物語』を見ようと思っている方は、ぜひ事前にWikipediaでもいいので『安寿と厨子王』の概要を調べてから視聴することをお勧めします。


コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。