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音楽讃美第11回:中島みゆき『組曲 (Suite)』

※このカテゴリー「音楽讃美」は、世間でいうところの音楽レビューになるのでしょうが、僕としては自分が聴く音楽は全部最高に自分が好きなものばかりなので、星がいくつなどという「評価」はしません。とにかく自分が触れている音楽作品を讃美しようというカテゴリーです。基本的にネタバレを含むので、ご注意ください。それでは、どうぞお付き合いください。


今回取り上げるのは中島みゆきが2015年にリリースしたアルバム『組曲 (Suite)』です。

セルフカバーや近年では『夜会』の曲もアルバムに収録されることが多かった中島みゆきですが、このアルバムは1980年以来の完全オリジナルアルバムです。シングル曲も収録されていません。

しかし、これから中島みゆきを聴こうとしている人に堂々と勧められる非常にバランスの良いアルバムに仕上がっています。

中島みゆきはベスト盤も含み、デビューからほぼ毎年アルバムを出していることもあって作品がかなり多く、ファンが「みゆき初心者」にお勧めのアルバムを考える時は困るものです。

作品が多いだけでなく、各アルバムの多様性がもはや強烈とも言えるレベルなので、たとえば「時代」や「地上の星」、「糸」から入った人に夜会アルバムの『転生』は勧められないし、「わかれうた」など初期の曲に興味を持った人にも『中島みゆき』(アルバム名)なんかは個人的には傑作と言えど、お勧めできるかは怪しいところ…。

ベスト盤を勧めれば話は早いですが、でもそれじゃあ面白くない感じもします。そんな時にぜひ『組曲 (Suite)』を候補に挙げたいです。

『組曲 (Suite)』は一曲目の「36時間」からいい意味でリスナーを裏切ってくれます。「一日を36時間とするよ。他の人の考えは知らないよ」と宣言しつつ、その意図が「みんな追われ過ぎているから、やり残したことをやるために、愛する人を大切にするために36時間としませんか」と語られていく、ピアノがメインのとんでもなく優しい楽曲です。

一曲目からこれが来ちゃあ、先に進めない。それくらいの名曲ですが、『組曲 (Suite)』がまさに「36時間」なのかもしれません。このアルバムは日常に追われ過ぎた人が、非日常に逃げ込んでまた心穏やかに日常に戻れるような時間を提供するためのもの、だからこそ1曲目にこの曲が置かれているのでしょう。すこしアルバム『心守歌』と似ている雰囲気もあります。

以降、ちょっと歌謡曲・フォークっぽいサウンドからロックな楽曲まで出てきますが、全体的に歌い方が優しいです。一時期顕著だったうなる様な歌い方は、このアルバムでは激しめの「Why&No」においても抑えられています。

ちょうどアルバムの後半スタートに位置する「空がある限り」、アゼルバイジャンなど具体的な風景をイメージさせながら幻想的で壮大な世界観を歌い上げているのは素晴らしすぎます。

ほかにもカメラマンについて歌った「ライカM4」など、いろんな世界を見せつつもバーで語りかけているような「LADY JANE」でアルバムを締めくくるのも中島みゆきらしいですが、意外と今までになかった楽曲の配置ですね。

そういえばこのアルバムの曲も歌われたライブ『一会』も「ジョークにしないか」という、意外な曲で終わりました。

中島みゆきがとてもポジティブな意味で脱力しつつ、だけど何かを悟ったわけでもなく、人生の機微と気楽に向き合って創り上げたような印象を『組曲 (Suite)』は与えてくれます。

シングル曲がないことから取っつきづらさはあると思いますが、一度聴いてしまえば、というか一曲目を聴いてしまえばすんなり入れます。

ぜひ、中島みゆきの「36時間」へ皆さんも案内されてはいかがでしょうか。


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