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音楽研究第5回:楽器分類の意義

みなさんは「楽器を分類して」と言われると、どのようなカテゴリーに分けるでしょうか。一般的な楽器の分類として、弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器という分類(以下、「一般的な分類」と表記)がありますが、実はもう一つ、ザックス=ホルンボステル分類法(以下、「SH法」と表記)と呼ばれるものがあります。今回はこの2つの楽器分類についての記事です。

SH法による分類とは?

SH法は音楽をリスナーとして楽しんでいる方はもちろん、作り手でも知らないことがあるほど、そこまで多用されていません。まずはこの聞き慣れないSH法について解説します。

一般的な楽器分類に対し、SH法では楽器を体鳴楽器・膜鳴楽器・弦鳴楽器・気鳴楽器・電鳴楽器の5つに分類します。体鳴楽器はそれ自体を叩くなど、楽器自体に物理的刺激を与えることで音が鳴るものを指します。膜・弦鳴楽器はその名の通り、張られた膜や弦に作用することで音が出ます。気鳴楽器は空気の流れを利用した楽器、電鳴楽器はデジタルな楽器(音)を指します。

SH法と一般的な分類で何が変わるのか、具体的にフルート・ピアノ・パイプオルガンの3つで見ていきましょう。

まず、これらを一般的な分類に当てはめるなら、フルートは管楽器、ピアノとパイプオルガンは鍵盤楽器です。ところが、SH法ではフルートとパイプオルガンは気鳴楽器、ピアノは弦鳴楽器に分類されます。

つまり、一般的な分類とSH法では同じ仲間だった楽器が違うカテゴリーに移動することがあるわけです。

2つの分類の意義は?

このように楽器のカテゴライズでは一般的な分類とSH法という手法があり、前者がよく使われてはいるものの、それぞれに意義や使われてきた背景があります。

一般的な分類をもう一度振り返ってみましょう。弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器、これらをよく見てみると、ピアノやバイオリン、チェロからトランペットまで、西洋の楽器のほぼすべてがいずれかに分類できることがわかります。

実はこの一般的な分類は西洋音楽の理解、そして演奏において非常に便利なのです。先ほどピアノとパイプオルガンを例に出しましたが、これらでは同じように演奏できる楽曲を完全ではなくとも共有できますし、実際に西洋ではレパートリーが被ることも少なくなかったという歴史があります。

そして、現代の日本の日常で聞く音楽のほとんどが西洋音楽の影響を受けています。そう考えると、一般的な分類が「一般的」になったのは自然なことと言えます。

一方、SH法は楽器の発音の仕組みを研究する時に力を発揮します。ほかにも、今まで楽器に分類されなかったものをSH法ではカテゴライズすることが可能です。たとえば、最近では救急車のサイレンやiPhoneの通知音を使った音楽があり、一般的な分類には当てはめづらいこれらの音は、SH法で電鳴楽器と明確に分類できるわけです。

発音原理の理解という点ではSH法はアカデミック・専門的な要素が強いので、あまり普及しなかったという背景があります。しかし、日常の様々な音を音楽に使うことが増え、グローバル化によって西洋以外のローカルな楽器・音楽の理解も求められる現代では、SH法も十分価値あるものかもしれませんね。

まとめと問題提起

今回はSH法を紹介しつつ、楽器の一般的な分類と比較して両者の意義を考察しました。2つの方法ではある楽器が別のカテゴリーに入ることがあります。あなたの聴いている音楽、作っている音楽をSH法で分けてみると、何か新しい着想が得られるかもしれません。また、ほかに自分で楽器の分類方法を考えてみるのも面白いですね。「楽器」は僕たちが思うよりずっとたくさんあり、楽器の世界を見渡す手法ももっとあっていいかもしれません。

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